適応

太陽病漢方・3巨頭の組み合わせ

急性期の治療がうまくいかず、病気が先へ進んだ状態のひとに。咳、痰といった上気道の症状だけでなく、上部消化管にまで影響が出ている状態。高熱が続き、胃の調子も悪くなって食欲が落ち、みぞおちが傷み、のども乾燥して味が悪くなり、口の中がねばねばする、めまいがする、など。

体温調節状態

体温調節の仕組み感染症漢方の考え方、をまずご覧ください。体温上昇に働く経路と体温下降に働く経路が両方ともフルで稼働している状態。

処方解説

石膏

1918年頃はやったスペイン風邪(激烈なインフルエンザ)で、浅田宗伯の弟子・木村博昭が用い、死者を出さなかった、という逸話のある処方です。太陽病の代表である葛根湯、少陽病の代表である小柴胡湯、陽明病の代表である白虎湯の主成分である石膏を組み合わせたもの。コロナ感染症に有効であった、との報告多数あります※1,2,3,4。感染症漢方の代表である葛根湯に組み合わせて、抗炎症・解熱・免疫調節の主役、柴胡、さらに強烈に熱を冷やす石膏、と3強の組み合わせという印象です。コロナの高熱に効く、という報告も頷けます。石膏は、日本の1日常用量は約10gに対し、中国では30-60gと大量に使用します。中国での使用量の多寡はともかく、安全域がそれくらいある、と考えてもよいのでは。作り方は、単純に、葛根湯1袋+小柴胡湯1袋+桔梗石膏1袋を混ぜて1回分として一日数回服用します。

豆知識(柴胡剤は小柴胡湯以外にもある!)

①葛根湯+小柴胡湯+桔梗石膏

②柴胡桂枝湯+桔梗石膏 (=桂枝湯(葛根湯の代用)+小柴胡湯+桔梗石膏)

頭痛が強いなどの合併症で、麻黄を含む①の組み合わせが使いにくい高熱症例には、②の処方も良いと考えられる。

ぴんっと緊張して「大きく」触れ、頻脈傾向

参考文献

  • ※1 COVID-19感染症に対する葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏併用の使用経験井齋偉矢, ほか 日本東洋医学雑誌72巻4号415-419 2021
  • ※2 Treatment of coronavirus disease 2019 with saikatsugekito: A case series. Yasuhito Irie, et al.Traditional & Kampo medicine vol8, issue3, 2021, July
  • ※3 新型コロナウイルス感染症に麻杏甘石湯、胃苓湯、小柴胡湯加桔梗石膏による治療を行った2症例 山崎玄蔵 漢方の臨床 第67巻第10号 2020 993-998
  • ※4 COVID-19に対して漢方薬が重症化抑制に寄与できた可能性を示す2例 加島雅之、早野聡史、岩越一 日本感染症学会HP新型コロナウイルス感染症症例報告(2020.3.31)

大福ギャラリー

浅田先生の診療所はこんな薬棚だったんでしょうか

柴葛解肌湯は、明治天皇の主治医であった浅田宗伯先生の口訣集に記載されている処方。当時皇太子だった大正天皇が、幼少期に高熱でけいれんを起こした時、当時60代だった浅田先生。懐に短刀を忍ばせて、皇太子を助けられなかったら自害する覚悟で診察したそうです。う~~ん、昔の人はすごい。気迫があったんでしょうね。当時、浅田先生の診療所は、患者さんの行列が道路にえんえんとはみ出し、交通整理が必要な状況だったとか。