麻黄(主成分エフェドリン)の入った漢方薬が主となります。発作時は漢方薬だけにこだわらず、西洋薬の併用が基本と考えております。また、短期間の頻回投与でエフェドリンは作用減弱する可能性があると考えているため※1、麻黄の入った漢方薬の1日最大投与量は厳守するよう患者さんにお話するようにしています。甘草の量は、発作時の屯用としてならば短期は気にしていません。しかし連用の場合は、4g/日を超えたら、月1でカリウムと浮腫と血圧を確認しています。

麻黄の使用が問題ないと思われる、若い人、胃腸の丈夫な人

麻黄の副作用を念頭に、適応を考えます。

麻杏甘石湯

喘息発作の真っ最中、起坐呼吸で汗をかき、のどが渇く、脱水傾向の人に。

麻黄はツムラ社1日3袋で4g/日。これは、葛根湯3g/日と麻黄湯5g/日の真ん中の量。決して少なくはないので、長期連用の場合は胃もたれ・高血圧などの副作用に注意します。

麻黄: エフェドリンによるβ-stimulant作用

杏仁: むかーし使われていた咳止めの「キョウニン水」の原料。主成分はアミグダリン。咳止め成分。

甘草: 甘草はツムラ社1日3袋で2g/日。長期連用の場合は、喘息発作コントロール漢方薬と合わせて4g/日を超えないように注意しています。 グリチルリチンで11βHSD阻害による内因性ステロイドの作用延長

石膏: 強烈に炎症をおさえ、血管内脱水を改善するが、機序は不明。ともかく「のどの渇きがなくなった」と言われることが多いです。データ示せなくて申し訳ないです。

小青竜湯

言わずと知れた、アレルギー性鼻炎の漢方薬。鼻炎を合併するタイプの喘息発作によく効く印象があります。

水様性鼻水が多く、くしゃみ、流涙、むくんで冷えがあって四肢が冷たいが、体力のありそうな若い人が適応です。麻杏甘石湯との使い分けは成書チェック必要ですが、私は、冷えや水様性鼻汁があればこちらにしています。

小青竜湯の喘息に対する効果は、※2の論文をご参照ください。

麻黄は1日3袋で3g/日。鼻炎で連用している場合は、胃もたれ・高血圧に注意。

甘草は1日3袋で3g/日。若干、多いので、他の併用漢方薬の甘草の量に注意する。4g/日を超えたら、カリウムと浮腫と血圧のチェック。

胃もたれ・高血圧などの副作用で麻黄が使えない人

苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)

小青竜湯の裏の処方と言われ、麻黄が副作用で使えない人によいです。発作の真っ最中に気管支を広げる作用はありません。鼻炎持ちの方で、喘息発作のごくごく初期に、屯用で飲むと良いと言われることがあります。苓甘姜味辛夏仁湯については、慢性期の喘息コントロールがメインの役割になりますので、そちらをご覧ください。(リンクに飛びます)

木防已湯(もくぼういとう)

心不全漢方として有名。昔は、先天性心疾患の人で、左心不全をきたす人は赤子のうちに亡くなっていました。かろうじて、ASD(心房中隔欠損症)/VSD(心室中隔欠損症)など、右心不全をきたす人はそれなりに生きることが出来たのだと思います。

生きられる人がいなかった理由からか、漢方薬の中で、左心不全漢方はありません。右心不全漢方はありますが、数は少ない。唯一、エキスで使用可能なのが、この木防已湯。木防已湯は、肺動脈圧を下げるデータがあります※3。また、その薬理作用は加齢変化を受けにくいといも言われています※4

喘息の長患いの人は右脚ブロック、右房負荷などの心電図所見を呈することが多いです。このように、右心系に常に負荷がかかっているような人によく効きます。

肺血管抵抗圧を下げることでVQmismatchを改善させることが、自覚症状の改善に寄与していると考えられます

気管支攣縮に対する効果はないので、発作改善薬ではありません。発作の真っ最中というよりは、明け方に喘息発作をきたしやすい人の予防に眠前に飲むとよい印象があります。

よく眠れました、なぜかのどの渇きがなくなりました、と言われると、心の中でガッツポーズです。

参考文献

※1 NEW薬理学改訂第4版, 田中千賀子ほか, 南江堂, p233

※2 気管支喘息に対する小青竜湯の臨床効果, 江頭洋祐ほか, 日本東洋医学雑誌第45巻第4号859-876, 1995

※3 漢方薬の循環器系への作用: 基礎薬理と臨床応用, 西田清一郎ほか, 日薬理誌132. 280-284, 2008

※4 シノメニンの心臓イオンチャネルとと大動脈厥寒への薬理作用, 佐藤廣康ほか, 日薬理誌146, 126-129, 2015