急性感染症の漢方の診察のポイントは4つあります

①発汗の有無を確認すること。

②悪寒(寒気)の有無

③口渇の有無

④脈診を正確に取ること

発汗の有無

汗をかいているか否かは最重要項目です。発汗の有無とは? 本質は、何をみているのでしょう? 発汗を重要視する意味をご参照ください。

解熱鎮痛薬を飲むと、発汗してしまいますが、「飲む前の状態」が大事です。問診で注意して聞き取りを行いますが、小さい子供さんだと供述があやふやで困ることも多々あります。そんな時は、「桂麻各半湯」で折衷案を図ることもあります。

悪寒(寒気)の有無

感染症漢方のキモ1でとりあげた第1ポイント、「現時点での、病原菌に対する個々の反応のしかた」を判断する材料となります。「生体に病原体侵入→白血球がサイトカインを出し、視床下部体温中枢のセットポイントが上がる→寒気を感じ、血管を収縮させることで体熱の放散を防ぎ、筋肉を震えさせることで熱産生を行う」。悪寒は、この一連の流れが働いているかを見る材料となります。

ご老人の方で抵抗力が弱い人は、熱はそんなに上がらず、全身状態だけが悪化して、ただただ横になっているのみ、という方がいますが、そのような方は「悪寒」を感じませんし、使う漢方薬も生体を強烈に温める漢方薬が中心となってきます。温める漢方薬は煎じ薬が多いため、このサイトではエキス製剤の「麻黄附子細辛湯」のみ、記載しています。

口渇の有無

口渇とは、「冷たい水をがぶがぶ飲みたい」という欲求のことを言います。高熱の状態が続くと、生体は脱水のほうに傾き、高熱による悪影響が出てきます。この口渇があれば、生体を冷やし潤いをもたらす「石膏」を含む漢方薬を使わねばなりません。

脈診~脈をみるって、結局何してるの?の話~

一番、マスターすることが難しい項目です。

脈診は何を見ているか?

それは、「血管内容量と交感神経の緊張度」です。

まず、脈をしっかり触れるならば、「血管内容量は十分あるから、脱水には陥っていない」、と考えます。脈は触れるが、血管内容量のなさそうな頼りない感じだと、「脱水か何かで、交感神経が緊張して血管抵抗が上がっているのかな、それとももともと高血圧なのかな」と考えます。ちょうど、臨床のモニターでよく見る、動脈圧ラインの波形と同じです。血管内容量が少なくて交感神経が緊張しているときの圧波形は、先端がとんがっている割に、その下の積分値(面積)が少ないものです。

脈の所見が大事な漢方薬もある

動脈
交感神経と血管内容量次第で
触った感触が全く変わる

葛根湯、麻黄湯、小青竜湯(下記)ならば、臨床症状でだいたい適応がわかりますが、「桂枝二越婢一湯」「桂麻各半湯」(下記)は、脈診で見分けなければいけません。そして、患者さんのなかで、「桂枝二越婢一湯」「桂麻各半湯」の適応は、一番多いのではないか、と個人的に思っています。「なんか熱はあるんだけど、ほどよく発汗してるから熱が上がりすぎないし、、働けるから、、しようがなく現場でがんばってる」、みたいな人ですね。サイト管理人大福が漢方研修医だったころ、この2剤を見分けるための脈診所見を覚えるのが苦手でした。しかし、脱水の程度とそれによる交感神経の緊張を考えながら、よく見ると、とてもシンプルであることに気づきました。

表の中の「(大福)」は、「サイト管理者・大福の私見」という意味です。「三潴先生」とは、サイト管理者・大福が私淑する「福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座教授の三潴忠道先生」のことです。

漢方薬発汗三潴先生の脈診のイメージ(大福)の
脈診イメージ
血管内容量
(大福)
交感神経の緊張度
(大福)
1.小青竜湯ありナイロン糸のように細くて非常に緊張している脈糸、鋭利な刃物超少ない緊張している
2.桂枝二越婢一湯あり軽く緊張があり折った紙の折り目を触れているような脈そうめん少な目やや緊張
3.桂麻各半湯あり緊張は弱く、脈に幅がある。表面は平たんな、きしめんのような感じの脈。うどん正常正常orやや血管拡張気味
はじめての漢方診療十五話第一版 三潴忠道著, p64, p74 を改変

1. 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の適応となる人

水毒体質で、血管外に水分が漏出しやすい状態になりやすい人。何らかの刺激により、血管内脱水に陥りやすく、代償性に交感神経系が緊張しやすい。「いつも汗ばんでて緊張しやすい。満員電車や朝礼の時は気持ち悪くなりやすい」エピソードの人が多い。言い方は大げさだが、出血性ショックの先端のとがった動脈圧ラインの波形を思い浮かべると、脈診のイメージがつきやすい。

2. 桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)(桂枝湯+越婢加朮湯)の適応となる人

若干の脱水状態のため、交感神経系がほどよく緊張しているが、体力があり全身状態は悪くない人。熱っぽくてのどが渇く人。脱水を補い(石膏)、熱放散のために血管を拡張(桂枝・麻黄)する必要がある。発汗しているため、桂枝湯がまず選ばれ、それに追加して石膏の含まれた方剤が必要とされ、越婢加朮湯が追加されている。

3. 桂麻各半湯(けいまかくはんとう)(桂枝湯+麻黄湯)の適応となる人

ややのどが痛いが、発熱と放熱のバランスがとれている人。病原菌と戦うために高体温を保つ必要がある(経路1)が、放熱(経路2)もそれなりに行われており、全身状態はよい。桂枝湯をベースに、のどの痛みに対し、杏仁が含まれる麻黄湯が追加されている。

大福こもれ話

昔は妊娠って、命がけだったんでしょうね

私に漢方を教えてくれた先生はすごいことに、脈診することで、若い女性の妊娠を本人より前に知ることもあったそうです。妊娠すると、胎児に血流を増やすために全身の血管抵抗が下がり、脈診してみると「やわらかい血管」に変化します。名人になると、この変化を、鋭敏に感じ取ることもできるようです。

動脈硬化が進んでいる方だと、脈診は当てにならないので、注意が必要です。