コロナに限らず、喘息一般について述べます。

ふつう~体力のある人

柴朴湯(さいぼくとう)

柴朴湯の証
腹証奇覧を改変

小柴胡湯と半夏厚朴湯を合わせたもの。慢性炎症が基礎にあり、のどの違和感を訴える場合によい。気管支喘息慢性期のステロイド量を減らすエビデンス※5,6,7あり。

咳が出ると発作が出てしまい、咳を気に病む神経質なタイプによい。粘っこい痰がぺとっと張り付いてとれない、と訴えることもある。

基礎疾患に喘息がなくとも、長引く咳でのどの違和感を訴える症例によい。

柴朴湯は、ステロイド代謝酵素である11βHSDをブロックすることで、内因性ステロイドの作用を延長することが抗炎症機序である。

風邪などウイルス感染症の急性期の咳には使われない。

左図のごとく、胸脇苦満が腹証となる。

下記は、柴朴湯について、私が一般の方に向けて、ツイッターで語った内容です。詳しくは、ツイッターのページに移動してお読みください。

虚弱体質

苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)

苓甘姜味辛夏仁湯イメージ
腹証奇覧を改変

小青竜湯の裏の処方と言われ、麻黄が副作用で使えない人によい。

甘草は1日3袋で2g/日。

使用目標(証)

喘鳴、咳嗽、うすい喀痰、水様性鼻汁があり、下記の条件の人に※1

①痩せ型・胃腸虚弱で、麻黄剤(小青竜湯など)により胃腸障害などを呈する場合

②疲労倦怠感、動悸、息切れ、むくみやすい、うすい喀痰、手足の冷えなどを伴う場合

③腹部が軟弱で、心窩部振水音を認める場合

④応用として、気管支炎、COPD※3など

大福の自検例でも、くしゃみ鼻水など、アレルギー性鼻炎を伴う喘息の方に良い印象。特に鼻粘膜の色調が薄赤い人に自覚症状の改善が多いとの報告2。

副作用

甘草は1日3袋で2g/日。他の漢方薬を併用するときに、甘草の量は気を付けます。それ以外で気にすべき副作用ありません。

茯苓杏仁甘草湯(煎じ薬)の代用になります

茯苓杏仁甘草湯は、煎じ薬のみになりますが、1700年昔から「胸痺(きょうひ)」と言って、息切れ・呼吸困難・咳嗽に用いられてきた漢方薬です。

吸入ステロイド薬の効果がいまいち感じられない・成人発症・女性・胸が苦しいタイプの喘息発作によく効くと言われています。

苓甘姜味辛夏仁湯の中には、この茯苓杏仁甘草湯の内容生薬が全て、含まれているため、代用として使用可能です。

桂枝加厚朴杏仁湯(けいしかこうぼくきょうにんとう)東洋薬行28

桂枝加厚朴杏仁湯の証
腹証奇覧を改変

使用目標(証)

桂枝湯が適応となるような陽証タイプ。頬っぺたが赤くて少し体内に熱がありそう、ちょっと頭が痛い、汗かきやすい、体力があまりなく虚弱体質で風邪ひきやすい、そのような方が咳・軽い喘息・寒さや乾燥で「こんこん」しやすいときに、桂枝加厚朴杏仁湯による長期のコントロールの適応となります。喘息が基礎疾患にある場合は、ステロイド作用のある漢方を用いないと根治にならないので、必ず、柴胡桂枝乾姜湯と桂枝加厚朴杏仁湯をセットで処方するようにしています。

また、お年寄りの方にも副作用なく使える咳漢方です。ご老人の方は、ほかに服用する漢方薬があれば、甘草の量に注意します。


医師処方でも市販薬でも手に入ります。医師の方へ。あまり、有名な漢方薬ではないので、ご存じない方も多いです。下記↓↓の写真のような箱に入っております。

あまり有名ではありませんが、
保険で出せます

副作用

1日3袋で甘草2g/日。他剤との併用時は甘草の量に注意。桂皮が入っいるので、シナモンアレルギーの人は注意。

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

ステロイド作用のある柴胡を含む、虚弱者用の漢方薬。黄芩を含むので、3か月おきの肝機能チェックは必要ですが、長い目でみると、1秒率の改善が見込めます。11βHSDの阻害による自己ステロイド作用時間の延長がその本態なので、ステロイドとしての副作用なく使えます。柴胡を含むため、IFNや血小板10万以下は禁忌です。乾性咳嗽が出た場合、一応、肺CT検査でIPの否定が必要です。

参考文献

※1 臨床医のための漢方薬概論, 稲木一元, 南山堂, p736-741

※2鼻アレルギーに対する苓甘姜味辛夏仁湯の臨床効果, 前田稔彦ほか, 耳鼻臨床, 補92:43-46, 1997

※3苓甘姜味辛夏仁湯が著効したCOPDの1例, 玉野雅裕ほか, 日東医誌vol69no1, 29-34, 2018

※4浮脈を呈する症例に対する苓甘姜味辛夏仁湯治験, 関谷信康ほか, 日東医誌vol60No6, 641-646, 2009

※5Egashira Y, et al. A multicenterclinical trial of TJ-96 in patients with steroid-dependent bronchial asthma - a comparison of groups allocated by the envelope method. Ann N Y Acad Sci, 685: 580-583. 1993

※6渡部創: 気管支喘息児における気道過敏性及び運動誘発喘息にする柴朴湯の長期投与効果について. 日本東洋医学雑誌, 41(4):233-239, 1991

※7岡本章一: 難治喘息の治療に関する研究(第1編), モルモット喘息モデルにおける細胞反応型アレルギーに対する柴朴湯の効果, 岡山医学雑誌, 106:305-314, 1994