人参養栄湯(にんじんようえいとう)

適応

処方解説

構成生薬の覚え方: 人参養栄湯は、十全大補湯から大棗・生姜・川芎を取り除いて、遠志と陳皮と五味子を加えたものです。昔から病後の体力低下に用いられてきました。十全大補湯に、頭をクリアにする遠志を加えて、体も脳も元気に、という意味でしょうか。

「大黄と人参」は、研究対象として大学院生は好んで選ばない、と先輩から聞いたことがあります。理由は、構成成分が多岐にわたり、研究しにくいからです。単成分を研究し、どの受容体にどのように効くのかを、追い求めていく方がシンプルで、結果を出しやすいのでしょう。人参養栄湯を調べていたら、作用があまりに多岐に渡っていて、文献を読むだけで大変でした。「研究対象として選びにくい」という意味がよく分かります。

人参養栄湯には、大きく分けて3つの作用があると思います。下記2.3についての論文は、このサイトの目的からは外れるので割愛いたします。

• 1. 脳賦活作用。脳血流増大や神経伝達物質に作用することで、脳の機能を回復させる。
• 2. 分化の上流である、造血幹細胞への作用を通して、赤血球や血小板、白血球を増やす。
• 3. 慢性炎症による過剰な免疫反応を抑制する。肝や肺の線維化抑制や、アトピー性皮膚炎の改善などに寄与する。

人参養栄湯の脳賦活作用に関する論文のご紹介

①コロナ後遺症に関する報告

• コロナ後遺症のブレインフォグに効いたという報告^※1
• コロナ後遺症の脱毛に効いたという報告^※2

②人参養栄湯が、大脳の血流を増加させ、アルツハイマー病の認知機能や食欲低下・無意欲を改善したという報告

• 人参養栄湯が、大脳皮質血流を増加させたという報告^※3
• 人参養栄湯が、健忘のある虚弱な高齢者やアルツハイマー病の認知機能や食欲低下・無意欲を改善したという報告^※4　

参考文献

• ※1　矢数芳英, ほか. 新型コロナウイルス感染後の後遺症(Long COVID)に人参養栄湯が奏功した1症例. 漢方の臨床　2021: 68: 709-721
• ※2 原田佳尚, ほか. 新型コロナウイルス感染症後遺症の脱毛に人参養栄湯が有効であった2例. 日東医誌　Kapo Med vol.73 No.3 342-346, 2022
• ※3 渡辺信博, ほか. 脳内コリン作動系の賦活化を介した漢方薬・人参養栄湯の大脳皮質血流に対する作用. 自律神経, 59 : 231-237, 2022
• ※4 OhsawaM, et al. A possibility of simultaneous treatment with the multicomponent drug, Ninjin'yoeito, for anorexia, apathy, and cognitive dysfunction in frail Alzheimer's disease patient: An Open-Label Pilot Study. J Alzheimers Dis Rep 2017; 1: 229-235

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