まず小建中湯(しょうけんちゅうとう)について

腸内環境を整える漢方です

皆様、子供のころ、お腹を壊しやすかったですか?

子供のころ、アレルギーがあったり、アトピー性皮膚炎だったけど、成人になると治った・・・というご経験はおありでしょうか。

小児の腸は、未熟なところがあり、いいものも悪いものも吸収してしまいます。その悪いものがアレルギーやアトピーの原因だったり、腹痛の原因だったりするわけです。漢方外来では、アトピー性皮膚炎のお子様に、よくお腹漢方の「小建中湯」を処方します。それは、未熟な腸をお腹漢方で補助して、アレルギーの原因になるようなものを吸収しないようにする目的です。皮膚の病気なのに、お腹漢方?とよくご両親の方に不思議がられますので、きちんと説明が必要ですが。

小建中湯は子供さんでも飲みやすい、すっきり甘い漢方です。「建中湯」の「中」とは、体の真ん中、お腹を指します。お腹を建て直すという意味の命名です。腸の動きを整える「桂枝加芍薬湯」という漢方薬に「膠飴(こうい)」という粉末飴を加えて作られます。

何故、小建中湯が腸内環境を整えることができるのか? ~ヨーグルトの話~

小建中湯の一成分、膠飴(こうい)が関係してきます。膠飴は、いわゆるでんぷん(米、トウモロコシ、じゃがいも)を加熱してから麦芽汁を加えて作った粉末飴です。米から作られたものが良質とされています。

皆様、ヨーグルトにオリゴ糖を混ぜると腸内細菌が活性化されて腸内環境が整う話をご存知でしょうか。オリゴ糖は善玉菌の餌となります。餌を食べた善玉菌は元気になり、腸の中が弱い酸性に傾くことで、悪玉菌の増殖を抑えることができる・・・これが、ヨーグルトにオリゴ糖を加えると効果的な理由です。そして、膠飴は、この「オリゴ糖」の役目を果たします。膠飴≒オリゴ糖=善玉菌の餌。

また、桂枝加芍薬湯は腸の極端な過収縮を抑え、腸の血流を増やすことで腸の動きを改善させます。

桂枝加芍薬湯・膠飴、二つの力で、小建中湯は善玉菌を増やし消化管の運動を改善します。

黄耆建中湯とは

今回ご紹介する「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」は、この「小建中湯」に体力を補う生薬「黄耆(おうぎ)」を加えた漢方薬です。小建中湯の適応になる人よりも、さらに虚弱体質の方に向いています。作用は、小建中湯とほぼ同じと考えてよいでしょう。

コロナ後遺症の方は、あまりにも消耗がひどすぎて、「補中益気湯」が合わない・飲めない方がいます。補中益気湯には、柴胡という寒性生薬を含むのですが、これがつらいのかもしれません。量は少ないし、慢性炎症を抑えるには、欠かせない生薬ですが、消耗が激しい人は、まず吸収を立て直す必要があります。

補中益気湯よりも、マイルドな体に優しいがしっかりと効果のある漢方は・・・と聞かれますと、私はこの黄耆建中湯(か小建中湯)を処方しております。皆様、六君子湯と黄耆建中湯の使い分け、お分かりですか?

胃の不調→六君子湯

腸の不調→黄耆建中湯

コロナ後遺症で辛い方は胃も腸も、助けが必要だと思うので、両方飲まれてもよいでしょう。

2袋で1回分の漢方薬があるのは何故か?

皆様、大建中湯・小建中湯・黄耆建中湯の本当の飲み方をご存知でいらっしゃいますでしょうか?

2袋が1回分であることの説明パンフ

ツムラ社さんのパンフレットの一部を記載します。この図は、1日分6袋、1回分2袋を説明しています。ここに書かれていませんが、小建中湯や大建中湯も、1回2袋、1日3回、合計6袋が一日量です。なんで、ほかの漢方薬は1回1袋なのに、これらの製品だけ1回2袋なのか?

この3つの漢方には膠飴(こうい)という粉末飴が入ってますが、粉末飴の量が多めに必要で、1回分が1袋に入りきらないからです。

粉末飴は、善玉菌の餌になり腸管を動かしてくれますが、量もそれなりに必要となってきます。多いなあ・・と思い、1袋のみの服用でもいいですが、力価は半分になることをご理解ください。